367人が本棚に入れています
本棚に追加
2
「あ、おかえりー」
仕事を終え、ぐったりとしながらアパートに辿りつくと、玄関前に郁人が座り込んで待っていた。こんなところで待つなと何回言ったところで聞くつもりがない。はぁ、と溜息を一つ吐きながら玄関の鍵を開ける。
「熱中症になんだろ。もうだいぶ暑くなってきてんだから」
「ちゃんと、少しは時間つぶしてから来てるって」
「友だちと遊んだりとか、いいのか」
「・・・・・・別に、全が気にするとこじゃないでしょ」
郁人が学校の事とか、自分の事を自分からあれこれと話すことはない。聞いても、こうやってはぐらかされるばかり。あまりうまくいっていないのか。俺に話すつもりがないのか。
「な、全。今日は何食いたい?」
「んー、さっぱりしたもの」
「もうすでに夏バテ? 早くない? じゃあ、冷やし中華とか?」
昼間に真壁が食べていたコンビニの冷やし中華を思い出し、それいいな、と頷く。郁人はニカッと笑って、冷蔵庫の中を覗くと、買い物行ってくると張り切っていった。
最初のコメントを投稿しよう!