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「ぁ、あっ」
声は自然と洩れ、止められない。
「っ!」
怜央くんの指が、内側の粘膜をこすった時、今までにないくらい身体が反応して跳ねた。身体は燃えるように熱くなり、息がうまくできない。
「ん? ここ好き?」
「あっ、待っ、やぁ」
待って、と言っているのに怜央くんはその場所を執拗にこする。目の奥がチカチカ光る感覚に怖くなった。
「ま、待って怜央くん、なんか変……っ」
「いきそう? いいよ。俺のことぎゅってして」
怜央くんの言う通り、彼の身体に手を伸ばした。じわりと濡れたシャツにふれながら、首の裏に手を回してぎゅっと抱き着いた。
中に入っている怜央くんの指は、私の中をかき回すように動く。激しいものではなくて様子を見ながらゆっくりしているのがわかるけれど、内壁をこすられると何かが込み上げてくる。
「あ、あぅ、ん!」
「可愛いよ、紗江」
吐息交じりに耳に吹きかけられた言葉に、身体がぎゅっと収縮して思考が飛んだ。
「――っ!」
「ぅ、わ……指ちぎられそ……」
びくんびくんと数回身体を震わせて、見知らぬ境地へと達していた。力を無くした腕はするりと怜央くんを開放し、ベッドへ放った。まだ身体がぴくぴくと痙攣したまま、荒い呼吸をする。胸がバクバクと大きな音を立てている。
「いっちゃった? 可愛い」
ちゅ、と顔中にキスを降らせる。唇に近いところにふれたけれど、あくまで唇にはふれなかった。
「今日はここまでにしておこうか。初めてだし」
ほっとしたのも束の間、怜央くんに言われた言葉を思い出した。ここに来た目的だ。
「でも、これって……怜央くんが気持ちよくなるためのものじゃないの?」
私ばかりがいろいろされて、声を出していた。怜央くんの発散のためのはずが、彼は気持ちよくなることは何もしてないように見えた。
「……そういえばそうだったね。視覚的にすごく気持ちよかったよ」
怜央くんは私の腕を引き、身体を起こしてくれた。頭を撫でて髪の乱れを直してくれる。離れるとすぐにタオルとペットボトルの水を持ってきてくれた。
「シャワー浴びる?」
「ううん……隣だし、帰ってから浴びるよ」
「わかった」
情事が終わったらすぐ帰るなんて、まるでマンガの中で見たセフレのようだ。怜央くんの発散のための行為なので実際は同じようなことだろうけれど。
「なに? まだ腑に落ちてない顔してる」
「だって……これじゃあ私ばっかり……」
さっき、ふと目に入った怜央くんの下腹部は強張ったままだった。これではなんの意味もない気がする。
「それなら、また明日よろしくね。明日は俺もたっぷり気持ちよくしてもらうよ」
「……っ!」
墓穴を掘ってしまった。
来なければいい話なのに、怜央くんの微笑みには逆らえない。なぜかそう思った。
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