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7時から始まった歓迎会も2時間程度で終わり、店の外で次はどうする、とみんな話をしている。緊張していたせいか、酔いが回っていて帰りたいという気持ちが強くなっていた。でも一応私のための歓迎会ではあるし、帰るわけにはいかない、と葛藤する。
「手島さん、二次会行く?」
倉本さんに声をかけられて、まだ答えが出ていなかったので口ごもる。
「……えっと」
「迷ってるなら、俺と二人で二次会しない?」
「えっ」
酔ってふらふらしていたはずの倉本さんの足取りはしっかりとしていて、表情もころりと変化する。あれだけ飲んでいたのに、倉本さんはお酒が強いらしい。
「手島さんのこと前から気になってたんだけど、今度でもいいから飯行かない? これわりと本気で」
「……」
しっかりと目を見ながら真面目な顔をして言われて、嘘や冗談ではないことがなんとなく伝わってくる。これが嘘だったらもう人間不信になってしまうだろう。どう答えようかとさらに考えあぐねていると、突然冷たい手に腕を引かれた。
「……ひゃっ!」
「……紗江、帰ろう」
「れ……有馬さん?」
「すみません、彼女幼なじみなので、世話しろって言われてて」
「……過保護なんだねえ」
倉本さんに言われて、困ったように笑う怜央くん。世話をしろなんて、誰も言ってないのに。
「じゃあ失礼します」
「あ、あの、今日はありがとうございました!」
みんなが振り返り、手を振ってくれる。女性社員にはぎろりと睨まれたりもしたけど、それよりも怜央くんの強引さに驚き、戸惑っていた。
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