05.嫉妬

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 長い時間をかけて怜央くんの熱が、ようやく中へと入ったみたいだ。その頃にはもう私も怜央くんも汗だくだった。 「……紗江の中、すごく気持ちいい」 「……ん……」  私の中は怜央くんでいっぱいで苦しい。少し動くだけで痛みが走る。初めて受け入れた男の人の熱に、下腹部は違和感だらけだ。 「ごめんね。少しずつするから」  怜央くんは私の熱くなった身体を撫でながら、動かずにじっとしてくれていた。中はびくびく震えるもので埋まっている。とうとう怜央くんと最後までしてしまったんだ。何度も身体にふれられてきたけれど、やっぱり最後までするのとは全然違う。怜央くんの体温が直接送り込まれてくるような、身体の内側から怜央くんの熱に移されていくような、おかしな感覚だ。 「は、ぁ」  怜央くんがちょっと動いた時、息が洩れた。痛みが薄れていくと同時に、快感が頭をもたげる。 「気持ちよくなってきた?」 「ん……」  気持ちがいいというよりも痛みが薄れ感覚が戻ってきた、という感じだ。 「ほら、濡れた音すごいよ」  怜央くんが動くたびに粘着質な音が響く。耳を塞ぎたくてもそんな力など出ない。ゆるゆると腰を動かされるだけで、甘い声が出てしまう。じっとりと見下ろされる怜央くんの視線から逃れるようにかぶりを振った。 「や、だ」 「紗江可愛い」 「……っ」 「……、締まった」  怜央くんが眉根を寄せ、喉仏を上下させる。怜央くんも苦しそうだ。 「俺に抱かれてる紗江、可愛い」 「も、もういいからっ」 「はぁ……ごめん、もう限界」 「あ、ぅ!」  ゆっくりだった腰の動きは、律動を速める。行き来する熱の質量が大きくなり、中を圧迫する。 「紗江、大丈夫?」  時折怜央くんの手が私の頭や頬を優しく撫でる。揺さぶられている間も大切にされているような錯覚をしてしまう。  部屋に入った時から優しくなかった怜央くんに優しくされると混乱する。どっちが本当の彼なのかわからない。 「ん……、怜央、くん……っ」 「ごめんね、もうちょっと」  ぐちゅぐちゅと音がする。怜央くんを見上げると、今までにないくらいつらそうな表情で汗を滲ませて、息を吐いていた。その表情を見た時に胸がきゅんと疼いた。 「……っ……」  黙ったままびくびくと腰を震わせる怜央くんは、熱い息を吐いた。少しして、中から熱が引き抜かれたのに、下腹部にはまだ大きな違和感が残っている。  ついに、怜央くんと最後までしてしまった。  最後までしてしまったら、あの隣で聞いた女の人と同じになってしまった。  今まで以上に、ただ性欲を発散させるためだけの関係の出来上がりだ。  自分の気持ちに気づいてしまって、胸が苦しくてどうにかなりそうだった。
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