742人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「れ、怜央くんっ?」
「ようやく手に入れたのに、離すわけないでしょ」
ぎゅっと、苦しいくらい強い力で抱きしめられた。
「……離して。出てってよ」
「なんで俺を拒否するの?」
「……」
言えるわけがない。
身体だけの関係を求めてる人に告白なんて、できるわけがない。
「俺が嫌いになった?」
「……そうじゃないよ。でも、やっぱりこういう関係よくないなと思って」
「どうして?」
「……身体だけ、とか……私には無理だから」
「紗江は身体だけだって思ってるってこと?」
首を振りたかったけれど、そうなると気持ちがバレてしまう。だからといってうなずくことは絶対にしたくない。どうすることもできなくて黙ったままでいると、怜央くんの手が私の頬を包んだ。
「紗江……キスしていい?」
「え」
怜央くんの口から、意外な言葉が聞こえた。
「キスとか……しないんじゃなかったの?」
「んー、セフレはね。でも紗江は違うでしょ」
「……私は違うの?」
淡い期待を抱いてしまうような言い方。私は怜央くんを見上げた。
「紗江は、幼なじみでしょ」
すると怜央くんからは期待外れの答え。わかっていたはずなのに、何を期待してしまっていたんだろう。私は怜央くんから視線をそらしうつむいた。
「それと、俺の初恋の子」
頭上から、囁くような声が聞こえて、パッと顔を上げた。
「……え?」
「だから身体だけじゃないんだけど……だめ?」
怜央くんはうかがいを立てながらも、私の両頬を包み、ゆっくりと近づいてくる。
どういう意味?
最初のコメントを投稿しよう!