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怜央くんの言葉の意味を考えている間にも息がふれるほどの距離になる。
「ん……」
怜央くんの薄く柔らかい唇が、私の唇に重なる。時間をかけてくっついて、時間をかけて離れていった。
「……キスしちゃったね」
「あの」
「もう一回していい?」
「ん、う」
また、返事をしていない間に唇がもう一度重なる。怜央くんの唇が、私の下唇を食んだ。ただのフレンチキスではなかった。さっきよりも長く、甘い。上下の唇を交互に食まれて、熱い息が出た。薄く口を開けると、怜央くんは目ざとく気づき、舌の先を中に入れてくる。一瞬身を引いたが、そんなことお構いなしに、怜央くんの舌は歯列をなぞり、私の咥内を舐る。器用に狭い口の中で動き回る舌は、私の舌を見つけると、舌を合わせて絡めた。
怜央くんとの初めてのキスに、私は身体が固まってしまって何もできないでいた。ただ、されるがままだ。
今まで、キスは何回かはしたことがあった。怜央くんのことを忘れようと大学生の頃につき合っていた彼氏と何回か。それ以上のことはしていないけれど、数ヵ月しかつき合っていなかった彼のことはもうあまり思い出せない。でも、こんないやらしいキスはしたことがないだろう。そうだったらきっと記憶に残っている。
怜央くんは私の頬と耳を撫でながら、キスが深くなっていく。
「ん、ん」
じゅ、と唾液の混ざる音がして口の端からこぼれていく。それでも怜央くんは離してくれない。紳士的なその見た目とは反して貪るようなキスに、身体の力が抜けていく感覚がした。足が震えてうまく立っていられない。手も震えて、しがみつくこともできない。
「ぁ……はぁ……」
足の力を無くして、怜央くんにしなだれかかった。ふれた身体は熱く、ドクドクと鼓動が聞こえてくる。怜央くんでもこんなに鼓動が速くなるなんてことあるんだ。
「紗江、ベッド行こう」
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