Vintage

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 どちらからともなく真由子と手を繋いだ。温かさが繋がる。胸がジンとする。見回すとみんな手を繋いでいた。  左側の瑛大が私に手を伸ばしている。私はタブレットごと手を瑛大に伸ばす。瑛大と六華が繋がる。これで、全員が繋がった。  六角形に繋がった私達に、空からは優しく六華が降り注ぐ。  ああもう、勘弁してよ。  涙が溢れて止まらない。  思いきり冷たい空気を肺に送り込む。  曲が転調する。大サビは私がリードのまま続く。溢れる涙を零さないよう上を向く。届け、Vintage。六華に。そして、神様に。  神様、お願い。空から見てくれているのなら、どうか六華の声を返してください。六華は音楽が大好きだから。私達は六華の声が大好きだから。  まだ一緒に、歌いたいから。  誰からともなく手を離し、正面――スマートフォンを見据える。六華が見ていると信じて、全力で歌と想いを届けるんだ。風花ちゃんも頬に涙の線を描きながら、私達の中心で360度の動画を撮り続ける。  六華のパーカッションで曲が終わった。  私達には六華の姿は見えないけど、見ていてくれたかな。みんなで声をかけようと画面に寄ったら、六華の方から電話を切られてしまった。
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