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Vintage
『突然ごめんなさい。風花です。』
通知機能で表示されたその一文に、思わずスマートフォンを落としそうになる。だってまさか、彼女から私に個人的な連絡が来ようとは。恐る恐るメッセージを開き、目を通す。そこにある文字は読めるのに、意味がわからず混乱する。
つまりこれは、どういうことだ?
吐く息と同じで頭の中が真っ白になる。その時、手の中に収まったままだったスマートフォンが震えた。ドキリとしたけれど表示されたのが友人の名前でほっとする。連絡をとるのは久しぶりだけど、縋るような気持ちで通話ボタンを押した。
「ナルも風花ちゃんから連絡きた? 六華のこと知ってた?」
「見た。知らなかった。だって私も六華と連絡とってなかったもん」
声が震える。視界が滲む。
察したように、機械の向こうで真由子が同情の溜息をついた。
「大丈夫? じゃないよね。ごめん。てっきり二人は上手くいってるんだと思ってたから、何か知ってるかと思って連絡しちゃった」
真由子は何も悪くない。喉が詰まって、真由子に見えていないのに首を横に振ることしかできない。
「今そばにいてくれる人はいるの? いないなら誰か向かわせる。誰もいなかったら私が行く」
「真由子、飛行機乗らないとじゃん」
「ナルが一人で泣くくらいなら飛んでいくよ。て言っても朝になっちゃうけど。気遣わないでよ、Vintageってそういう存在だと私は思ってたけど」
その言葉に救われる。少しだけ目を細めたら、涙が頬を伝った。
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