Vintage

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 改めて届いたメッセージを読み返しているとまたスマートフォンが震えた。名前を見て理解する。多分真由子が、私にすぐに連絡するよう言ったんだ。 「ナル! ナル! 今どこ? 家?」 「ちょっと出てて今帰り道。もうすぐ家だよ」 「家行っていいよね?」  焦った声に笑ってしまう。Vintageのメンバーはみんな過保護だ。もう私だってみんなと同じく、二十歳を超えた大人なのに。 「彼女に言うみたいな台詞だね」 「ナルのことは彼女全員より大切だよ」 「全員って何」 「すぐ行くから、ちゃんと家いてよ!」 「はいはい」  学部は違えど大学が同じ(あまね)とは、今でも時々飲みに行くくらいには連絡をとっていた。だけどこうして家で二人きりになるのはいつぶりだろう。まあ、いいか。周なら私には絶対何もしてこないだろうし。    ピンポンの連打にドアを開けた瞬間、周に抱きしめられた。周の耳や鼻は紅くなっていて、その身体は冷たかった。その冷たさと、抱きしめた心地の薄さに驚く。私なんてコートもマフラーもしないと歩けないのに、酷く薄着で来たものだ。 「寒そうな格好で来たね」 「慌てて家飛び出して気づかなかったな。でも今めっちゃ寒い。温めて、ナル」 「真由子の許可は得ていますか?」 「ううん、変なことしたら殺すと釘を刺されています」  ふふ、と笑みが漏れた。時が経っても変わらない。ここには六華の理想がちゃんと存在する。そう思うと同時に、六華の笑顔が浮かぶ。また目の奥がつんとする。  だめだ、私は六華のことになると強くいられない。 「みんな連絡取れたから。家にいさせてるから、テレビ電話で話そう。大丈夫、僕がいる。泣いたっていいから」 「みんなして過保護すぎだよ」 「ナルが泣き虫だからでしょ」  そんなに優しい声で皮肉を言われたって、痛くもかゆくもないよ。
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