Vintage

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 私と六華、真由子、周、そして季依(きい)ちゃんと瑛大(えいた)の六人は、高校生の時にVintageというアカペラグループを結成した。卒業まではいつも一緒で、卒業してもこのまま変わらないと信じていたけれど、進学でそれぞれ散り散りになってしまってからは全員が集まれたことは一度もない。  暇さえあれば誰かがメッセージを送り、頻繁に通知が届いていたVintageのSNSグループも、もう何年開いていないだろう。  風花ちゃんから連絡のあった夜、私達はテレビ電話で緊急会議をした。五人揃うことも卒業以来だったから、初めは普通に現状報告。  大学三年、十二月。真由子はこれから就活、周は院に進む。季依ちゃんは来年夏から教採。瑛大は一浪したからまだ二年。私ももうすぐ就活が始まる。  誰も私に六華との関係は聞かなかった。多分真由子が根回ししてくれたのだと思う。ありがたかった。  私は六華が好きだった。そしてそれは六華の方も。高校生の時にはあえて名前を付けなかった関係も、大学に入ればいずれ恋人同士になれるのだろうと思っていた。だけど結局、遠く離れた土地でお互い慣れない生活が始まる中、自然と連絡の頻度は減っていった。よくある話だった。  和やかな雰囲気を本題に移したのは、やはり姉御肌の真由子だった。 「みんなはどう思った? 風花ちゃんのお願い。私はやってもいいと思ったよ。練習はだいぶしないとだけど」  それを皮切りに、みんなが賛同の意を示した。変わらない関係が、ただ嬉しかった。近くの周はまだしも、離れた他のみんなとは六華と私みたいに簡単に途切れちゃうんじゃないかって、Vintageを心の支えにしているのはもう私だけなんじゃないかって、思っていたから。  今度はその嬉しさと安心感に、糸が切れる。 「ナルはどうする?」  予想通り泣き出した私の背中を擦りながら、周が私の顔を覗き込む。 「もちろんやる。六華のためにできることがしたい。大切な仲間だから」
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