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「あの時に、ここの金を意地でもあの子に手渡してやれていたら、もう少し違う人生を送らせてやれていただろうか」
おそらく洋至も、擦り寄ってきた弓束の人と成りから春之の受けた扱いが推察出来ているのだろう。その皺に刻まれた深い後悔は拭いきれない傷痕のようにも見える。
「俺は春之を手に入れたいと思っている」
単刀直入に言う八紘を洋至は真っ直ぐに射る様な視線を向けてきた。
「直系の跡継ぎは俺から先は産まれない。春之しか愛おしいと想えるものがないから」
そう言い切った八紘に洋至は呆れたと鼻で嗤い飛ばす。
「跡継ぎなど社を背負える者が成れば良い。今回はたまたま血の繋がったお前やお前の父が適任だっただけだ」
そこで洋至はふわりと祖父の顔になる。
「そんな取るに足らない椅子を幸せになる者の足枷になどしてはならない」
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