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吸血鬼は泣かない。
流果は汗でずり落ちそうになる眼鏡を押し上げた。制服の半袖シャツからのぞく白い腕も、じっとりと汗に覆われている。
空気そのものが水分を孕んでいて、肺の中まで重たく入り込むようだった。顎に沿って切りそろえた真っ直ぐな髪の黒さも、体感温度を上げているような気がして恨めしい。
恨めしいと言えば、なんの手違いか自分の寄生先がこんな極東の、人口一万ちょっとの田舎町になってしまったところからもう恨めしい。
とにかくさっさと吸血かSEXを済ませて帰ろう――
それが果樹園生まれの吸血鬼の青い果実から、正式な吸血鬼になる条件なのだから。
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