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生ワクチン
WHOではアメリカの製薬メーカーの意向を受けた学者たちが強い権限を持っていた。
フランスで開催された国際会議においてアメリカの開発したばかりの生ワクチンを「まず日本で使ってもらおう」という議題が出たことがあった。
効果の裏付けが不十分な新薬。日本人は体のいいモルモット扱いである。
同行している他の日本人学者たちもいたが、誰一人として反対する様子はなかった。
我那覇は強い口調で反論した。
「日本は先進国であり、ワクチン政策に君たちの指導を必要とする国ではない」
沈黙は同意であり、敗北だった。
だから一番初めに声を上げた。
すると黙り込んでいた他の日本人学者たちも援護にまわってくれた。本心を明らかにしてくれた。
こうして議場での風向きは変わって、日本は新薬の実験場となる前例を作らずに済んだのだった。
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