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ワクチンの選定
スイスのジュネーブにあるWHO本部に専門家12人が集まり、ワクチンの選定が行われることになった。
その中の一人に我那覇広志の姿があった。
選定されるワクチンは二つ。アメリカ製のワクチンと日本製のワクチン。
我那覇は嫌な予感を感じとったが、その不安は見事に的中した。
11対1。
我那覇だけが日本製のワクチンを支持していた。
出来レースである。専門家を集めて選定をしたという記録だけを残すための会議。
閉会後三十分のコーヒーブレイク。
我那覇は二日間の討議で使った110ヵ国のデータをコンピュータにかけて分析させた。するとアメリカ製のワクチンは日本製のワクチンの半分しか効果がなかった。
我那覇はそのデータを人々に見せて声を張り上げた。
「君たちは政治家か科学者か。科学者ならこのデータをどう見る」
雑談は止まり、静寂が辺りに広がった。
選定は終了している。専門家の中には我那覇に冷ややかな姿勢を送る者もいた。
机を叩く音が二回響き、皆がその方向に目をやると議長がいた。
「私の判断で採決を取り消します。ドクターガナハが提案した日本の意見に従います」
誰かが拍手をした。するとそれにつられるようにして拍手の数は増えていった。
そして会場は拍手の音に包まれた。
我那覇広志への称賛の拍手だった。
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