第1話 昆虫の指輪

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第1話 昆虫の指輪

〈昆虫は3億年前に地球を侵略にきたエイリアンである。〉 夕方テレビの前で都市伝説の番組を見ている子供が2人、笑い転げているのは兄のタクミ、本気で怖がっているのは妹のミヨ、小学校6年生と4年生の兄妹である。 「ミヨ聞いたか?昆虫がエイリアンだとよ」 「何がおかしいの⁉︎昆虫は気持ち悪いし変な形だし、絶対エイリアンだよ‼︎信憑性ありすぎだよ」 タクミは立ち上がり窓から外を見つめる。 「昔は一緒に昆虫採集していたのに、どうしてこうなった・・・」 「お兄ちゃんと‼︎昆虫採集中に‼︎蜂の大群に襲われかけて‼︎こうなったのよ‼︎」 ピンポール ミヨの叫び声を消すように家のチャイムが鳴る。宅配物が届いたようだ、タクミは玄関へ向かう。 タクミが受け取りに行くとドアの前に箱が一つ置いてあった、タクミはすぐに何の箱かわかった。 タクミは昆虫の形をしたビスケットのお菓子をよく買っていたが、この前〈当たり〉と書いてあるシールを指定された住所に送っていたのだ。 「何が届くかわからないって小学校でウワサになっているからな、中身見て友達に自慢してやろう」 ワクワクしながら箱を開けると中にオオクワガタムシの形を模した指輪が入っていた。 「確かにオオクワガタムシは黒いダイヤと言われているけど・・・」 タクミは微妙な顔をした、タクミは昆虫好きだが、指輪を付けるにはまだ抵抗のあるお年頃だ。 「ミヨにあげるか、指輪だし、昔は一緒に昆虫採集もしていたし・・・」 リビングに戻ったタクミは信じられない光景を目にする。 ミヨが、女性と蜂の中間のような化け物、蜂女に拐われそうになっていたのである。 「ミヨ‼︎」 タクミが呼ぶもミヨに反応は無い。気を失っている。 「蜂女‼︎ミヨに何をする気だ‼︎」 タクミの声にオオクワガタムシの指輪が反応するように光り出す。 タクミは考えるより先に指輪をつけていた。 指輪から突然黒い刀身の打刀が飛び出す。 庭に飛び出すタクミと蜂女、タクミとミヨの家は比較的裕福な家庭、キャンプ好きの父親はキャンプ道具の手入れなどで、広い庭のある家を購入したのだ。 蜂女はミヨを抱えながら飛び立とうとしている。 「させるか‼︎」 タクミは蜂女に近づき黒い刀で羽根を斬る、しかし蜂女は落下しながらも毒針でタクミの右手を刺す。 タクミの右手は痺れて思うように動かせない、トドメと言わんばかりに蜂女はお尻の針をタクミに向けて突進する。 「オオクワガタムシ‼︎お前の自慢の大顎は1つだけじゃないはずだ‼︎」 再びオオクワガタムシの指輪が光出す。指輪からもう一本の黒い刀が飛び出す。 タクミは二刀流で蜂女の針を弾き飛ばす。 「決めるぞ‼︎オオクワガタムシ‼︎」 針を弾き飛ばされてのけぞった蜂女を✖︎の字に斬ったタクミ、傷ついた蜂女はミヨを置いてその場を立ち去って行く。 戦いが終わると黒い刀は指輪に戻っていく。 「ミヨ大丈夫か?」 「はっ⁉︎蜂の化け物が・・・お、お兄ちゃん‼︎やっぱり昆虫は・・・」 「ああ‼︎やっぱり昆虫は最高だな‼︎」 「いや、最悪でしょーーー‼︎」 今、目の前で起きた不可思議な事を前にしても、指輪を見つめながら笑うタクミに、ミヨは深くため息をついた。
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