序章

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6年2組をまとめるいわゆる学級委員長タイプ田野畑 咲菜(たのはた さな)は凄い影響力を持っている人物だった。子役をしていた訳でもない。ミュージカル等を習っていた訳でもない。でも彼女のは、そう思わせてしまうようなものだった。彼女の周りにはいつも誰かがいて、笑顔の絶えないところだった。 人数が少ない西恵小にはクラス替えというものが無かったため、そのクラスのメンバーは6年間ずっと一緒だった。特定の人と集まったグループで過ごしてきたみんなの中に混ざることが、どれだけ難しい事か。でも咲菜がいてくれたことで、それは難しい事では無くなった。咲菜は僕が転校して、初めての休憩時間、1人でいた僕に声をかけてくれた。当然、周りにいるお付きの者状態のクラスメイト達も一緒に。前の学校で友達が少なかった僕にはそれがとても嬉しかった。一目惚れというのか、小学生の恋なんてそんなものだろう。僕は咲菜に恋をしたのだ。声をかけてくれたことがただ、嬉しくて。でもそれが恋だって、その時の僕はまだ知らない。 それからクラスメイト達とはすぐに仲良くなることが出来た。1月から3月の短い間で、友達と仲良くできたことは、どれだけだっても忘れることは無いだろう。 4月。中学校も、西恵小から受験組を除いたメンバーほぼもちあがりで入学した。西恵の地域外から来たのは4、5人。その時の入学生は合計53人だった。なんせ小さな学校だ、それぐらいで十分だろう。僕のクラスは1年1組。2分の1の確率で咲菜と同じクラスになれるのだが、残念ながら咲菜は2組だった。 西恵中はその人数の少なさからか、1年生でも「体験」という形で生徒会に入ることが出来た。1年生で生徒会に入りたがる人はほとんどいなかった。そこで奇跡が起きた。生徒会顔合わせの日、咲菜がそこにいたのだ。しかもその年の1年生徒会メンバーは2人。奇跡としか言いようがない。 「鹿屋くん─だよね?」 不意に彼女から話しかけられた。覚えてくれていたのか。 「うん。田野畑さんだよね。生徒会、入ったんだ。」 「だって楽しそうだし!生徒会って、特別な活動とかあるっぽいじゃん?」 屈託ない笑顔で話す咲菜が愛おしかった。この時初めて、これが恋だと分かった。 ここから既に、僕達の道は、曲がりくねったものになっていたのかもしれない。
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