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前ページから続きました。
さて、小説家になりたいと思った少年は何をしたか? そう、公募に作品を出したのです。この時にもまだ小説家になろうはありませんでしたからね。あったとしても、最初の頃はそれこそただの小さな投稿サイトだったでしょうし。
そんなわけで応募を……出来ませんでした。初めての挑戦は締め切りオーバーで時間切れ。規定枚数内に収めるのがどれだけ難しいことか思い知りました。賞ごとに使える枚数は決まっています。好き勝手書いていいわけではないのです。しかもその公募にはお題も含まれていたため、なおさら難しかった。
ただ、その時に考えた世界は最悪の魔女シリーズの舞台になっている世界のベースになりました。何がどこで活かされるかわからないのも創作の醍醐味。
それからも何度か挑戦しましたが、やはり締め切りを過ぎてしまったり、応募は出来たのに掠りもしなかったりということが数年続きます。とはいえ、あの頃がむしゃらに書き続けたおかげでまがりなりにも小説と呼べるものが書けるようになったのではないかと思っています。
そして、ある年に奇跡が起こりました。まず一つの作品が一次選考を通過します。初めてのことなので舞い上がりました。でも本当の衝撃はその後にやって来ました。
出版社から電話が来たんです。
一時通過した出来たばかりのレーベルのところとは別、超有名レーベルの編集さんからでした。公募に出す時には自分の名前や住所、その他の経歴などを書いた履歴書みたいなものも入れて送らないといけないんですが、そこに性別を書き忘れていて、その確認のための電話でした。
最初はなんだそれだけかとガッカリしたんですが、続けて言われました。
『二次選考通過されました、おめでとうございます』
腰が抜けるかと思いました。なにせ一番好きなレーベルの賞で二次選考通過できたわけですから。その後、二十人くらいしか残っていなかった二次選考通過者として雑誌に名前も載りました。まだその雑誌は記念に保管してあります。
ただ、結局その後に発表された最終選考通過者には名前が無く、プロデビューはできずじまい。そして、この出来事が僕にとってはかえってマイナスに働いてしまいました。
「あの作品より面白いものを書けば今度こそプロになれる」
そう思い込んで、ますます躍起になって小説を書き続けました。そしてドツボにハマりました。どうしても「あの作品より上」だと思えず、書いては消して書いては消しての繰り返し。
何度かは公募にも出しましたが、駄目だと思いつつ締め切りが迫って無理矢理書き上げた妥協の産物です。当然また掠りもしない状態に逆戻り。
公募に出すって辛いですよね。限られた枚数の中で、単品で完結している作品を書き上げ、やっとのことで投稿して何ヶ月も結果を待った挙げ句に落選。落選すると感想も何も受け取れません。しかも次はまた新作を考えてやり直しです。
さらに駄目押しで、例の個人サイトの管理者との一悶着がありました。
ある日、突然何人かの常連でチームを組んで作品を作ってみないかと言われたんです。迷走していた僕は十年来の友人だからというのもあってその話に乗りました。
ところが集まったのは僕も含めて三人。そして僕以外の二人は言い出しっぺも含めて、やる気を出していたのは最初の一ヶ月だけ。すぐに何もしなくなってしまいました。
設定自体は面白いと思えるものを思いついたんです。これもほとんど僕一人で考える羽目になりましたが、最悪の魔女で登場した「魔素」関連はだいたいこの時に考えた作品からの流用です。当時はマナと呼んでいました。管理人さんの「ある時、月から放射された何かが原因で地球は魔法が使える世界になった」というアイディアから僕が膨らませたものですが、キッカケ以外全部自分で考えた上、名称を変えれば自作で使ってもいいと当時言われたので遠慮なく使わせてもらいました。相手は本当に上に書いた一言分のアイディアしか出しておらず、自分で書くと言った作品も三年間待ったのに出して来なかったので文句は言わせません。
ケンカ腰なのは彼等とはケンカ別れしたからです。言い出しっぺがまず最初の作品を書いてみると決まったので、ずっと待っていたんです。三年間。
何度も催促して、その度に「書いてるから待って」と言われました。でも結局書きかけのものすら提出してもらえず、キレました。
どうキレたかというと、彼が書くと言った「魔法が使えるようになってから数百年後の物語」ではなく「魔法が使えるようになった直後の混乱した世界の物語」を書いて二人に見せたわけです。
賞に出すとかでなく、それをヒントにするなり、対抗心を燃やすなりしてやる気を出して欲しかったのですが、無反応。もう一人のメンバーは「面白かった」の一言だけ。その後もマトモな反応は得られませんでした。
その後、二度話し合いを行ったものの、もう付き合うだけ時間の無駄だと思ったので交流を一切断ちました。最後の会話の時に言われたことは「これはファンタジーじゃなくSFだよね? 俺が書きたいものとは違う。もし何かに応募したりするなら名称は変えて、設定も少しいじってね。感想? 後で指摘したい部分をテキストにまとめて提出する。それから公募なんてやめて小説家になろうに投稿しようよ。話もあそこで流行ってる要素を取り入れなきゃ駄目だよ。流行の作品を読んで勉強して」でした。
そんなわけで彼等とも決別し、完全に一人で創作をするようになってから数年。スランプから脱することが出来ず、そろそろ筆を折ろうかと思い始めました。
そんなところでまた次のページへ続く。
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