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01.禁断の洞窟
ドラゴンすら近寄らない、禁断の洞窟から出てきた人影。
二足歩行でよろめいているのは、白肌の冒険家が唯1人。
命からがら這い出てきた訳ではなかった。
もう命を失っていたも同然だったのだから。
残された命の時間と同様にゆっくりとした足取りが止まる。
彼は後ろを振り返り、本能のまま叫んだ。
洞窟の奥でよっぽど恐ろしい目に遭ったに違いない。
充血した目から涙が一筋流れた。
深紅の涙が。
血よりも濃い液体が、二筋、三筋と増えて、大河のように合流した。
彼の体中を巡っていたはずの血は、耳からもあふれ出し、
鼻と口からも噴水のように流れ出た。
下腹部をおさえながら膝から崩れ落ちると、前も後ろも、下半身が赤く染まっていく。
首を項垂れた瞬間、強力な力で折り曲げられる様に背を反らした。
ぐちゃりという不快な音が谷に響いた。
異国の冒険家は体中の毛穴からも夥しい出血をし、命を落とした。
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