01.禁断の洞窟

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彼の亡骸がダナックの民に発見されたのは、死後数時間。 住民の静止も聞かず、禁断の洞窟に入った余所者(よそもの)。 災いを畏れた民は、交代で洞窟付近の様子見をしていた。 「自業自得、言わんこっちゃない」 「ダナック(この町)にまで災厄が及ばねば良いが」 ダナックはエーシア大陸の南東部ラグライン王国の港町だ。 近隣国との交易も盛んで、特に沈香(ジンコウ)という香木は、 エーシア大陸の盟主・唐華帝国や黄金の島国・ツィァパングォで珍重された。 浅瀬には美しいホワイトサンズのビーチが伸びている。 椰子の木が風に(なび)いて、ゆったりとした時間が流れている。 陽射しは灼け付くように暑く、ダナックの民は健康的な肌色をしている。 ラグラインには春夏秋冬という季節はない。 常夏の王国には雨季と乾季があるのみだ。 切り立った崖や大理石の産地である山々があり、珍しい猿など生態系もユニークだ。 その為、異国の冒険家や密猟者がやって来ることも多かった。
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