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02.藩主の苦悩
ダナックの民の祈りは神には届かなかった。
件の洞窟に程近い集落は全滅した。
最初の犠牲者は、冒険家を埋葬をした心優しき者達だったのだ。
「あ、熱い! 体が灼ける!」
常夏の国を襲った災厄は、原因不明の熱病として顕現した。
倦怠感、悪寒、そして急激な発熱。
初期症状を訴えて2日以内には、全身から血を噴き出して死に至る。
血を浴びた者が感染する。
移動手段が馬や牛である地域にとって、情報の伝達は遅い。
ラグラインの王はもとより、ダナックを治める藩主の耳に入るより、
熱病の感染は迅速だった。
最初の集落は藩主の派兵により、完全に焼き尽くされた。
周辺の集落も隔離され、初期症状が出た者は一箇所に収容された。
港での交易も禁止となり、ダナックは見捨てられたも同然だった。
神にも。
同胞にも。
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