株式会社アイタイ

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エレベーターに一人乗る。特に狭いわけでもないが、なぜか圧迫感が強い。 個室内から空気が漏れ出ているように感じ、それを逃さぬように深呼吸すると、機械の独特な臭いが僕の胃を刺激した。昼にラーメンなんか食べるんじゃなかった。 5階の501号室。入口の名簿もさして気に留めず、ドアをスライドさせ素早く中に入る。向かって左、最も手前にいるのが今回の依頼人だと聞いていた。 僕はすやすやと寝息を立てている依頼人のそばに立ち、大きくもなく、小さくもない声で「来ました」と言った。 寝ている患者をどのように起こすか。 些末に聞こえるかもしれないが、これは僕ら社員の間で共有される問題の一つである。 不意に声を出したり肩を揺すったりすれば、体調に支障をきたすやも、驚かせるやも、という過剰な心配をする社員もいれば、無遠慮に「来ましたよー」と大声かつ耳元で知らせる社員もいる。 このように三者三様なのだが、僕はといえば、勤務年数を重ねるほどに分からなくなり、結局先程のように普通の音量での「来ました」に帰着したのである。 しかし、これもまた同僚に嘲笑される種である。起きなかったらどうするんだ、と。
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