株式会社アイタイ

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しかし不思議なことに10人中9人がこれで起きる。逆に「起きてください」では起きない。本当に。今度やってみてほしい。 とにかく僕はもう一度「来ました」と言った。すると、白い布団を纏った塊が数秒間うごめいた後、小さな呻きとともにごそごそと顔を現した。 高齢の女性で、年は80代後半に見えた。薄くなった頭髪は日光を反射して銀色に輝き、思わず病室内のベットを意味もなく見回す。ここ以外、全て薄桃色のカーテンに覆われていた。昼食後の昼寝なのかもしれない。 「依頼人の河北様ですね」 自分でも驚くほど冷たい声が出た。 矢継ぎ早だし怖いんだよ。そのうち悪評とか立つぞ、と誰かに忠告されたことがあったが、そう遠い話ではないかもしれない。 「社員の水田です。ご依頼内容を伺いに参りました」 河北さんはまた少し呻いて、ようやく「すみません」と絞り出した。 「こんな寝起きで」 「いえ、皆さん大体そんなものです」 河北さんはゆるゆると首を横に振り、重たい衣擦れの音を立てながら上体を起こした。 「看護師の方を呼んできましょうか」 「いえ構いません。いない方がいいわ」
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