こどもたちのパレード 6

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こどもたちのパレード 6

■ 喧騒の遠い、小学校の校舎裏。 そこで三人の少年がひとりの小柄な少年を囲み、ニヤニヤと意地悪く笑っていた。 壁際の少年はよわよわしく体を震わせ、ズボンの裾を、指が白くなるまで握り続けていた。 震える少年。三人のなかの、ひとりが言う。 「マナブくんさあ。なんで、学校来てんの? お前いるとさあ、ベンキョーする気なくなっちゃうんだよね、おれたち」 その態度は嘲りの色を隠さないもので、追従する他のふたりも同様に口角を上げ、校舎に背をつける体を包囲し、支配感に酔いしれていた。反撃など、考えてもいなかった。 ――そのために、気づくことができなかった。 影に隠れ、うかがい知れなかった瞳。 その瞳に意思を感じさせる、確かな強い光が宿っていたことを。 手のひらに覚えているぬくもりに、力を貰っていたことを。 リーダー格が手を伸ばし、少年のランドセルを奪おうとする。 「じゃあ、罰ゲームね。言うこと聞かなかったマナブくんから、なにか、もらうことにしまーす」 それを、バシン、とはじく手があった。 唐突な反抗に、三人が目を丸くする。 その顔に、力強い、勇気のこもった声がぶつけられた。 「…………ろよ」 「…………え?」 「……やめろって、言ってるんだよ!」 「――――!」 ■ 「…………」 時の経過した、校舎裏。 校舎からかいま見える青空を眺めつつ、少年は息をはいた。 突然の抵抗に、実は気の弱い三人はもごもごとなにかを言って逃げ去り、後には少年が残されていた。少年の、勇気が残されていた。 すべてを包みこむような、美しい青空。 心の片すみに残っている、どこかで見た、あたたかい光。 なぜか、感謝を告げるべきとの思いが唐突にあふれた。 少年はどこかに向かい、ありがとう、と小さくつぶやいた。 その言葉は校舎裏の空気にまぎれ、薄く小さく、溶けていった。 校舎の向こうで、カキン、と大きな良い音がした。 高々と空を飛んでいく白球が、少年には見えた気がした。
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