こどもたちのパレード 1

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こどもたちのパレード 1

眠りのなかに、少年は光を見た。 目を覚ますと、部屋が仄明るく光っていた。 あたたかく、それでいて柔らかな、安堵を覚えさせるような光。 不安もなにもかも消し去ってしまうような、包容力のある光。 少年が起き上がって周りを確かめると、その正体が知れた。 光は窓からでなく、室内灯ではなく、床に点々といくつも存在して部屋をかすかに照らしていた。 それは少年のいるベッドからドアへと、規則正しく一直線に続き、まるで童話の主人公が置いたパンくずのようだった。パンくずのように光は一本の道を形作り、少年をドアの外へと導いていた。 ――胸に渦巻く、期待と予感。生じた好奇心。ぬくもりある光。 気づけば少年はベッドを離れ、ドアノブに手を掛けていた。 ドアを開くと、光は廊下にも同様に存在し、少年が光を伝って廊下を進み、階段を下りて一階まで来た時、玄関の向こうにも光が連続しているのが見えた。 少年は、部屋を出たのと同じ心持で玄関まで行くと、靴を履いて道しるべを確かめ、ドアをそっと開いた。途端、夜の冷たい風がほおに触れたが、心に影響はなかった。少年は光の先を追い求め、夜のなかを歩きはじめた。
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