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こどもたちのパレード 2
住宅街は静寂、灯りは道に点々とある、かすかな光のみだった。
灰色の塀や電柱だけが薄闇にひっそりとたたずみ、存在感を持って夜の風景を作り出していた。
少年はゆっくりと、光の示す方向に向かって進んでいった。
足取りに呼応して、ひとりの靴音が遠く遠く響いていた。
やがて、視界が大きく開けた空間が見えた。街の大通りで、少年は足を止める。
目に映ったのは、住宅街とは異なる、はるかに深い暗闇。
光はといえば、歩道と道路の境目でちょうど消え失せ、進路はなくなっていた。
信号も街灯も、光という光がすべて飲みこまれたように沈黙し、道路の向こう側の景色はどれも息をひそめたように闇に沈んでいた。
普段見慣れているはずの街は別の顔をさらし、自分の体だけが、息づくすべてのように少年には感じられていた。
「…………」
大通りには誰の姿もなく、影すら存在してはいない。
そのなかで、普通であれば恐怖に繋がるであろう闇のなかに立ち、少年はただ前方を見つめていた。逃げ出すことも震えることもせず、暗く静かな街にひとりきり、予感を胸に屹立していた。
光の途切れた大通り。誘われたかのような場所。
そこに立った瞬間、ここだ、と心のなかで誰かが騒ぐのを少年は聞いた。
同時に心臓がドキドキするのを感じ、期待が胸に鮮やかに広がる感覚を覚えた。――なにかが、ここに来る。唐突に、そんな実感が芽生えていた。
無人の街。
広々とした、無灯の大通り。
高揚に体温は上がり、少年の体は闇の冷たさとは逆に少しずつ熱くなっていた。すると、その時だった――。
(……シャンシャン、シャン、シャンシャン……)
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