こどもたちのパレード 3

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こどもたちのパレード 3

周囲を、かすかな音が振るわせはじめ、わずかな気配が向こうから寄せるのを、少年は感知していた。 (……シャンシャン、シャン、シャンシャン……) いつしか、少年はその気配に引かれるように車道へと飛び出し、姿勢を前傾にじっと、目を凝らしていた。 細められた目には覚えのないほど真っ暗な車道が映り、その道路が徐々に向こうから明るさを増していくのが分かった。 歩道や建物が白く生まれ変わっていくのが、目にも心にも、少年には理解できていた。 (……シャンシャン、シャン、シャンシャン……!) 巨大な白光。明るさを持つ、大きな存在。 その光源が肉眼でも確認できる位置まで来たとき、少年の口から漏れたのは、「わあ……」という嘆息だった。 驚きに満ちた表情はまたたく間に笑顔へと変わり、大きく開かれた目には信じがたい光景が、まばゆく映しだされていた。 (シャンシャン、シャン、シャンシャン!) 車道を埋めるように、広がっていた光。 それは、目にもあざやかな、豪華絢爛のパレードだった。 妖精、動物をかたどったキャラクター。 その色とりどりの衣装を身にまとった多くのキャラクターたちが大型の車に乗り、笑顔を四方へと振りまきながら、愉快そうに歌い踊っていた。 よく見れば、車上だけではない。 車の足元、両側にもキャラクターたちは配備され、車上と同じような精緻なダンスを披露し、低速の車に合わせ、進んでいた。 どこの遊園地にもない、孤高のきらめきがパレードにはあって、その温かい発光が闇を薄く、遠く、少年の見えない位置まで、押しやっているようだった。 「…………わあ、うわあ…………」 音と光の洪水に、しばらく呆然としていた少年だったが、意識が徐々に返ったことで興味が湧き起こり、パレードの低速さにしびれを切らして、駆け寄ろうとする。 しかし、その足を、……わあ! という歓声が止めた。声に気を取られ、少年は周囲を見渡した。 見れば、いつしか歩道は――年齢も性別もバラバラな多くのこどもたちであふれ返り、こどもたちは薄闇に目を輝かせつつ、パレードに視線を向けていた。時折興奮に声を上げつつ、命じられたように歩道に留まり、列を乱さないように、パレードを眺め続けていた。
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