【第1章】第1話

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【第1章】第1話

「見て!もう満開じゃない?間に合ってよかったー。」 もくもくとした薄紅の並木が見え、弾むようにユリカは歩みを早めた。 「すごくきれい。」 「うん。」 微笑みながら、桜のトンネルをくぐる2人。 何度も立ち止まり、零れ桜を見上げている。 「ああ、ここらへん、確かにこんなだった。」 「うん。全然変わってないよね。懐かしいね。」 突然、強い南風が足元から全身を駆け抜けていき、花吹雪となった。 たまらず、手で顔を覆ったその直後。 「わぁ、花びらたくさん降ってきたー!」 ユリカは、舞い落ちる無数の花びらに向かって両手を広げ、しばらくして満面の笑みで手のひらを見せた。 「見て!花びら取れたよ!…2枚も!」
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