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帰りの電車で、ユリカは佐藤の作文のコピーを読んだ。
読めばいいんでしょ。読めば…。
ため息をつきながら、四つ折りになった紙を開いた。
…佐藤くん、意外ときれいな字を書くんだ…。
『僕にはなりたいものがあります。そのためならいくらでも頑張りたいです。
まずは勉強を頑張って志望校に合格して、その夢を叶えて将来は活躍したい。
今が頑張る時です。夢のために我慢したり諦めたりすることもたくさんあるかもしれないけど、それでもいいです。今さえ良ければいいという考えは捨てます。
努力を惜しまない人間になることと、志望校に合格することを、まずは今年の目標にします。頑張ります。そのために、僕はこの学校に来ました。』
ユリカは、この熱量に圧倒されてしまった。
なんでこんなに、頑張ろうと思えるんだろう。
なんでこんなに、将来に希望を持てるんだろう。
これが本心なの?本気でそう思ってるの?
…バカみたい。
努力?努力できるのも才能だよ。
親だって、好きなことやりなさいって、惜しみなく協力してくれるんでしょ?
どうせ私なんて、努力もできないし夢もない。ケチでろくに話も聞いてくれない親のいる私には関係ない。
佐藤くんは佐藤くんで、勝手に頑張ればいいじゃん。
読む前とは別のため息が出た。
…みんな、好きなようにできていいな。
やりたいこととかなりたいものがあっていいな…。どうせ私の人生なんて…。
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