第3話

6/6
前へ
/371ページ
次へ
帰宅すると、すぐに夕飯だった。 母と2人の夕飯は、いつも静かでピリピリしたものだった。 「土曜日、お父さん来るって言ってたよね。」 気を遣ってユリカは話を振る。 「…知らない。」 母の答えで、今日の機嫌が分かる。 今日は母を刺激してはいけない日だと察した。 ユリカの父と母は、ユリカが中学に入った頃から不仲になり、会話が一切なくなった。 そして気づいたら、父は家を出て、たまにやってくる程度だった。 母以外の女性がいるだろうことは、なんとなく分かっていた。 気持ち悪いと思いつつも、関係ないと心の中で線引きし、バランスを保つようにしていた。 「あんた、もっと早く帰ってきて家の手伝いしなさいよ。お母さん、いつも仕事で疲れてるの!」 「うん…。」 「お母さんばっかり家事やってるんだからね!せめてアルバイトくらいしてくれないと…。」 「…明日、テストあるから勉強しなきゃ…。」 「テストがあるからって何よ!?だいたいあんたはいつもそうやって…」 「…自分が食べたお皿は洗うよ…。明日はお弁当いらない。コンビニで買う。」 そそくさと食事を終え、ユリカは自室にこもった。 これがいつものユリカの生活だった。 一人の部屋と学校だけが、今のユリカの居場所だった。 第4話に続く➡
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加