第5話

3/6
前へ
/371ページ
次へ
そして佐藤が言った。 「森山さん、始業式の日、外でぶつかったの覚えてる?」 「え?うん。なんかそんなのあったかも。」 「あの時ぶつかったの、俺だったんだけど知ってた?」 「…桜の木の所でだよね。佐藤くんだったんだー。知らなかったよ。やだ、ごめんね…。」 「あの時、何やってたの?」 「えっと…、桜の花びらを取ってたの。もうなくなっちゃったけど…。」 少しの間を置き、気まずそうにユリカは答えた。 不思議そうな表情の佐藤に、ユリカは耐えかねて言った。 「桜の花びらをね、地面に落ちる前に取ると幸せになれるらしくて取ったの…。ちゃんと取れたから…。」 驚きつつも、佐藤は静かに笑った。 佐藤につられ、ユリカも恥じらいつつ笑った。 「森山さんておもしろいね。」 「おもしろい?そんなことないよ…。初めて言われたよ。」
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加