第49話

3/5
前へ
/371ページ
次へ
無言の時間が痛かった。 吐き気すら催しそうだった。 目を合わせるのにも勇気がいる。 もはやユリカは、走ったから苦しいのか、佐藤を前にしているから苦しいのか分からなかった。 とにかく胸が締めつけられ、呼吸がうまくできなくなっていた。 「…じゃあ私、戻るね。ありがとう。また来ることがあったら、よろしくね。書類、ちゃんと渡しとくね。」 そのまま持ってきてしまった封筒を、佐藤に見せる。 …よろしくって何だろう。 もう、あの頃の私達ではない。 すでに、遥かずっと前に終わったこと。 もう、とっくの昔に忘れていたこと。 もしかしたら、始まってすらいなかったのかもしれない。 せっかく忘れられていたのに…なんで今?
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加