第49話

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人生のほんの一時に、青春という淡い輝きをくれただけの人。 宝石のように美しい、心の奥にしまっておいた、小さな小さな宝物。 でも、どこかに行ってしまった。 砕けてどこかへ消えてしまった。 それでも、もうそれでよかった。 そんなことすら忘れていた。 仲の良かった、高校時代のクラスメイト。 ただの、昔好きだった人。 きっと、一瞬だけ私を好きでいてくれた人。 そして、変わってしまった人。 心が通じ合わなくなってしまった人。 離れていってしまった人。 …もう、生きる世界の違う、過去の人。 精一杯の、仕事用の笑顔を向けて踵を返す。 何も言わない佐藤は、最後に会った時と同じだ。
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