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顔を上げると、佐藤も小さく笑っていた。
そして力強く頷いた。
こんな笑顔の佐藤を見たのは、きっと高校生以来だ。
互いに、照れと懐かしさとではにかむ。
ユリカは、大きく息を吐いた。
ふと見上げると、大きく高い窓からは、春の光がいっぱいに差し込んでいる。
ビルの隙間から見える早春の空も、抜けるように青い。
そんなことすら気づけなかった。
世界がこんなにも明るいなんて。
「俺さ、まだ連絡先変わってないからさ。」
「えー?登録してあるかなー、佐藤くん。」
ユリカは空回りを覚悟で、冗談めいてうそぶいた。
佐藤は慌てて名刺とペンを取り出し、急いで記入をしてユリカに渡した。
「これ、俺の連絡先。いつでもいいから連絡して。」
乱雑ながらも、よく見ていた懐かしい筆跡が並んでいる。
黙って頷くユリカ。
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