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図らずも、止まっていた時が動いたかのようだった。
忘れていたのに。たかだか10代の子供の一時の恋だったのに。
喜びと戸惑いを胸に、心の中でユリカはつぶやいた。
「懐かしいなぁ…。」
痛みすら、懐かしいと思えた。
そして、手元にある、佐藤の最新の痕跡。
とても愛おしく温かく思えた。
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仕事を終え、数時間前に佐藤と言葉を交わした場所でユリカは立ち止まった。
その後大きく深呼吸をし、姿勢を正して家路に向かった。
そして、帰宅して佐藤にメッセージを送った。
『送信』を押す時の緊張感が懐かしかった。
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