35人が本棚に入れています
本棚に追加
【第1章】第1話
「見て!もう満開じゃない?間に合ってよかったー。」
もくもくとした薄紅の並木が見え、弾むようにユリカは歩みを早めた。
「すごくきれい。」
「うん。」
微笑みながら、桜のトンネルをくぐる2人。
何度も立ち止まり、零れ桜を見上げている。
「ああ、ここらへん、確かにこんなだった。」
「うん。全然変わってないよね。懐かしいね。」
突然、強い南風が足元から全身を駆け抜けていき、花吹雪となった。
たまらず、手で顔を覆ったその直後。
「わぁ、花びらたくさん降ってきたー!」
ユリカは、舞い落ちる無数の花びらに向かって両手を広げ、しばらくして満面の笑みで手のひらを見せた。
「見て!花びら取れたよ!…2枚も!」
最初のコメントを投稿しよう!