パムの子守唄

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クレーマー家の中庭 洗濯物を干すパム 側にはシェリーがいる 優しいこもれ日が二人を包む ー本当なら、遥か昔に こんな穏やかな日々を 過ごしていたはず… 二度と訪れることはない… そう思っていた 「ママ」 「なぁに?」 「虫さんがいるよ」 「どこに」 地面に屈んで蟻の行列を見る 片付けを終えた二人 「アンジー ほんとにいいの?」 「家でも書けるからね 今出かけたら入れ違いになるし」 そんな話しをしてるときキッチンの裏口のドアが開いた 「フーちゃん この子着替えさせて!」 びしょ濡れになったシェリーと家に入って来たパム 「どうしたの?」 「手を洗ってたら びしょ濡れになっちゃったの」 シェリーを見るアンジー 「じゃあ俺が…」 そう言って部屋に連れて行く 「パムは濡れてないの?」 「たいしたことないわ」 「でも、どうして?」 「ママと何してたの?」 「虫さんみてたの いっぱい、いっぱいいたよ!」 「虫さん?」 「みんな一緒におうちに 帰ってたんだ」 目をキラキラ輝かせながら言った 「なるほど、蟻の行列かな… じゃあ、この服着る?」 「うん!」 隅々まで綺麗なキッチン 「ごめんなさいね、後片付け」 「私じゃないの、アンジーよ」 「ほんとによく気がつくわね」 「今日は特に張り切ってるから」 「グレアムが帰ってくるから?」 「そうね」 少し笑みを浮かべるオフィーリア 「あの二人、もうギクシャクしてないわよね」 心配気に彼女に訊ねるパム 「あの二人は光と影なのかも」 「えっ…?」 オフィーリアをじっと見た 「うまく言えないんだけどね」 「フーちゃん」 「アンジーにとってはグレアムはもう一人の自分…みたいなもの」 遠い目をして言った 「お待たせ♪」 着替えがすんだシェリーを連れて アンジーが戻ってきた 「可愛いだろ♪」 ため息をつくオフィーリア 「シェリーは、あなたの着せかえ人形じゃないわよ!」 オフィーリアをまじまじみながら 「だって、誰かさんは、俺さまの好みの格好してくれないしさ」 「おあいにくさま あなた好みじゃなくて!」 膨れっ面になるオフィーリア 彼女の頬を突つくアンジー 「まっ、別にかまわないけどさ」 じゃれあう二人から離れパムの元へ来るシャーリー 冷蔵庫の食材を確認しているパム 「アンジー 買い物しなくていいの?」 「それだけあれば充分だよ」 服の袖をまくりながらキッチンへむかうアンジー 「手伝いましょうか?」 何気に聞くオフィーリア いいよと目で答えるアンジー   パムの側にいるシェリーと目が合い優しく笑うオフィーリア 「邪魔みたいだから公園に行こうか。パムも一緒にね♪」 その言葉にニコリとしたシェリー 「私も?」 パムが訊ねた 「そう!」 シェリーがパムにしがみついた 「出かけるなら帽子忘れずに」 「ありがとう」 「いえいえ、二人とも若くないんだから日焼けはシミになるよ!」 「どうもご親切に!」 皮肉ともとれる言葉に返事をした 「いってらっしゃい」
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