運命的な出会い

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運命的な出会い

「お湯君先輩!」 それは帰り道を歩いていたこと。 何故か後輩まで一応「先輩」は付けているけど、「お湯君」呼ばわりされる僕。 「何?」 「今日、これからみんなでカラオケ行くんだけど、お湯君先輩も行く?」 後輩なのに、タメ語で友達扱い。 慕われていると良く思ってはいるけど…。 「こら敬語使え!敬語!」 幼馴染の太田七海が後輩に拳骨を落としながら叫ぶ。 あ!ちなみに、七海って言うけど男ね。 名前の通り、7人姉弟の末っ子。 でも、しっかり者だったりする。 身長が178㎝あって、元サッカー部のエース。 モテモテ君なのに、七海は、ずっと僕を庇ってくれる優しい奴なのだ。 え?僕と七海が幼馴染からの恋じゃ無いかって? そんな訳ないだろう! むしろ、気後しちゃうよ。 イケメンで優しくて、爽やかスポーツマン。 僕みたいなチンクシャが相手なんて…、無理無理無理! それにね、幼馴染に恋愛感情なんて、実際は持てないよ。 だって、鼻垂れ小僧の時から知ってる訳だからさ。 僕は白馬に乗った王子様を待っているのだよ! そんな事を考えながら 「ごめん。今日、親に頼まれて宅急便の受け取りをしなくちゃならないんだ」 笑顔で後輩達を交わし、僕は逃げるように学校を後にした。 「実、そんなに時間に余裕ないのか?」 思わず置き去りにしてしまった七海が、走って近付いて来た。 僕は七海の顔を見上げて 「あ…ううん。まだ大丈夫だけど、あいつらに捕まると長いから…」 って、苦笑いを浮かべて誤魔化す。 七海は当たり前のように僕の隣に並んで歩き出すんだけど…、通りすがる女子達の目線は隣の七海に注がれる。 まぁ…確かにイケメンだけども…。 七海と一緒に居ると、僕は道端のぺんぺん草の気分になるんだ。 「あ…、又、溜め息」 僕が俯いた瞬間、七海に言われてしまった。 「実だって、顔を上げてれば可愛いんだから。もっと自信持てよ」 って、背中を叩かれた。 「七海!痛いよ!」 僕は頬を膨らませて七海を睨みながら 「僕、予定では高3までに、七海よりデカくなってる筈だったのにな〜」 ぽつりと呟くと、七海は笑って 「実はそのままで良いじゃないか。可愛いんだし」 と言ってきた。 むぅっと口をへの字にすると、七海は僕の頬を左右に引っ張って 「ほらほら、このぷにぷにほっぺ!そんな口したって、可愛いだけだぞ〜!」 って言ってからかってくる。 「可愛い言うな!男が可愛い言われても、嬉しくない!」 僕がそう叫んでも、七海は頬を触って離してくれない! クッソ〜!七海の奴!!!! なんで僕の身長は伸びないんだよ! 毎日、牛乳飲んでるし、せのびんというサプリだって飲んでるのに!!! くっそ!子供の頃は、そんなに身長差が無かったのに…。 僕は七海の手を振り払って 「七海のば〜か!ば〜か!ば〜か!」 と叫び、あかんべして走り去った。 自宅に入り、悔しさに地団駄踏む。 「今に見てろよ!」 って叫んで見ても、僕の雄叫びが虚しく響くだけだった。
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