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今、気持ちを伝えたら……どうなるのかな?
気持ち悪いって思われるのかな?
又、ご飯食べに行きたいって言ったら、図々しい奴って思われるかな?
今日が終わっても、電話したいって言ったら嫌がられるかな?
あれこれ考えてしまって、次の言葉が言い出せなくなってしまう。
思わず俯いてしまうと
「ほら、又俯いて猫背になってるよ!」
そう言われて、僕の両肩を掴むとグッと胸を張らせると
「そうそう。その方が良いよ」
って、頭を撫でられた。
水田さんにとって、僕はどんな存在なんだろう?
ふと思って顔を見上げたその時、水田さんの手が頬に触れた。
ドキリと心臓が高鳴る。
見つめ合って水田さんの顔が近付いて来る。
(え!まさか?)
そう思ってぎゅっと目を閉じた瞬間
「取れた!実君の頬から髪の毛に掛けて、焼き鳥のタレがくっ付いてたよ。どんな食べ方したら、こんな所にタレが着くんだよ」
って笑われてしまう。
(た…タレを拭いてくれたんだ)
恥ずかしくて真っ赤になると、水田さんは小さく笑って
「実君は、赤くなったり青くなったり…。本当に見てて飽きないよね」
そう言って、クスクスと笑っている。
そんな風にしていると、あっという間に自宅に着いてしまった。
「今日は楽しかった。またね」
水田さんが手を上げて僕に背を向けた瞬間
「あの!」
って叫んで、水田さんを呼び止めた。
不思議そうに見つめる水田さんに、僕は意を決して走り寄り
「あなたに恋して良いですか?」
必死の思いでそう告げた。
すると水田さんは驚いた顔をして僕を見つめると、小さく微笑んで
「ありがとう」
って呟いた。
もしかして…って希望を持ったその時
「ごめんね。実君の事は可愛いし、大好きだけど…。恋愛対象には見られない」
そう言われてしまったのだ。
「そう…ですよね。変な事言って、ごめんなさい!」
慌てて頭を下げて、僕は逃げるように自宅のドアに滑り込んだ。
「実君!」
水田さんの声が背中に聞こえたけど、僕は無視してドアを閉めた。
「そうだよね…。当たり前だよね」
ぽつりと呟いて、涙が溢れる。
ちょっと優しくしてもらって、何を夢見てたんだろう?
溢れる涙を拭って、部屋に入った。
その時、タイミング良く七海からLINEが入る。
『実、帰ってるか?』
その文字を見て、七海に連絡をした。
『実?どうした?』
ワンコール出た七海に
「七海…僕、失恋しちゃった…」
そう呟くと、七海はしばらく沈黙した後で
『今からそっち行く』
と言うと、通話が切れた。
しばらくして、家のインターフォンが鳴り響く。
「あら!七海君。こんな時間にどうしたの?」
「夜分遅くにすみません。実の部屋、いいですか?」
「え?あれ?実、いつの間に帰ってるの!どうぞ、どうぞ」
「すみません。お邪魔します」
って会話が、ドアの向こうから聞こえる。
そして階段を登る音が聞こえると
「実?入るぞ」
と言って、七海が部屋のドアを開けた。
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