恋した男子は強いのです

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七海には、二卵性双生児の姉が居る。 名前は六花(むつか)。 これまたスーパーガールで、テニス推薦で都内の有名私立高校へ通っている。 今は寮に入っていてあまり顔を合わす事は無いが、それまでは、僕、六花、七海は、物心着いた頃からずっと一緒で、兄弟みたいにして育って来た。 だから今更、「仲良いね~」とか冷やかされてもピンと来ない。 だから周りも、揶揄うのは最初だけ。 むしろ堂々としているせいか、今では許容されている。 「でもまぁ……、太田姉弟は本当におゆくんを溺愛してるよな」 と、小島の隣で苦笑いしていた津島が呟く。 「太田姉弟?」 小島が津島に聞くと 「あぁ、お前高校から一緒だから知らないのか。ななみんの双子の姉の六花な。めっちゃ美人なのに、おゆくんLoveなんだよ」 と言うと、吹き出した。 そう。六花は 「みのりんは私の癒しなの!連れて行く!」 寮に入る日、そう言って僕に抱き着いて離れなかった。 正直、六花が居た頃は大変だった。 幼い頃、七海と僕を取り合い、何度僕は腕を外されただろうか? 中学時代、告白して来る奴等に 「私、みのりん以外と付き合うつもりないから!」 と振るもんだから、何人の男に恨まれただろう……。 でも、天真爛漫で明るい六花を、僕も大好きだった。 恋愛の好きとは違うけど、僕が真ん中で左右に七海と六花。 中学時代は、それが当たり前だった。 だから、六花が別の高校に行ってからしばらく、「みのりん」って抱き着く腕が無くて寂しかったのを思い出す。 「へぇ……そんな美人なんだ」 小島が呟くと、津島が鞄からテニス雑誌を取り出し 「ジャーン!この表紙の美人が、ななみんの双子の姉、六花です!」 と言って見せた。 久しぶりに見た六花は、相変わらず美人だった。七海は嫌な顔をして 「おい!なんでそんな雑誌、持ってるんだよ」 って唸る。 「すっげぇ美人」 「だろう?俺、何度おゆくんになりたいと思った事か!」 と話している。 「六花って、附属の大学に行くんだっけ?」 と七海に聞くと、ブリックパックのお茶を飲みながら首を縦に振る。 「七海はサッカー推薦か……。僕も何かスポーツが出来たらなぁ~」 ポツリと呟くと、小島と津島が一瞬固まってから大爆した。 「おゆくん、スポーツ出来たからって、こいつらみたいにずば抜けなくちゃ大学推薦なんか貰えないんだよ」 そう言って、お腹抱えて笑ってる。 失礼な奴等だな!って、口をへの字にした時 「太田~!」 って、ドアの近くに居た野仲が七海を呼んだ。 七海は面倒くさそうな顔で立ち上がると 「ちょっと行ってくる」 そう言って廊下に立っている女子と少し会話して、すぐに戻って来た。 小島と津島がニヤニヤしながら 「引退してから、毎日、告白されて羨ましい事で」 と七海に言うと、七海は無表情で席に着いた。 分かってる。 七海は告白して来る子を振る度に、泣き出す女の子に胸を痛めてる。 いつだったか 「俺なんかに幻想抱かれてもなぁ~」 と呟いていた。
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