恋した男子は強いのです

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「ほら、あのビルの事務所を集配してんのそうだろう?」 七海が家の近くにあるいくつか会社の入ったビルを指さした。 なんと!確かに車に荷物を積んでいるのは、水田さん。 こんな身近にいるなんて、やっぱり運命なんじゃ! 目を輝かせて作業している姿を見ていると、何故か隣に七海も立っている。 「何してるんだよ」 隣の七海に呟くと 「え?実の好きな人って、どんな人かな~?って」 と、シレッと答えた。 「もう!お前は帰れよ!」 「はぁ?誰のお陰で、再会出来たと思ってるんだよ!」 七海の言葉に一瞬、言葉が詰まる。 「居ても良いけど、邪魔するなよ」 僕は七海に釘を刺すと、走って荷物を集荷している姿を電信柱の影から見守った。 顎を伝う汗を肩で拭って台車を走らせる姿に見蕩れていて、ハッと我に返る。 近くのコンビニに走ると、スポドリとお茶とビニール袋を買って来た。 今、水田さんはビルの中。 僕はノートの切れ端に走り書きで 『いつもお疲れ様です。今日は暑いですね。良かったら飲んで下さい』 と書いて、車のサイドミラーにぶら下げると、再び走って電信柱の影から水田さんを待った。 暫くして、水田さんが台車に荷物を乗せて現れると、車に荷物を詰め込んで運転席へと走って行く。 そして僕の差し入れに気付くと、辺りをキョロキョロしてから、誰に……とも無い感じで帽子を外してペコリと頭を深々と下げて、車に乗り込んで去って行った。 (かっ…………こいい!) あの、帽子を外して一礼! もう、あんな事してくれるなら、おにぎり3個付けても良い! 感動に酔いしれていると 「何?話し掛けないんだ」 って、背後から七海が呟いた。 「七海!お前まだ居たの?」 「居ちゃ悪いか」 「悪くないけど……」 すっかり存在を忘れていた僕を、七海が不機嫌そうに見下ろしている。
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