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鳩麦さんは、一冊ずつ本を少年に渡す。
少年は胸元まで姿が現れているのに、なかなか正解の一冊が見当たらない。
「彼の服に名札でもあれば、もっと探しやすかったですねえ、鳩麦さん」
「今は防犯上の理由から、名札は学校に居る間しか付けないそうですよ」
「じゃあ、この子の現状は登下校の最中なんだ」
沢山の白い表紙の本は、少年には重そうだ。
一冊ずつ持たせて、何も起こらなければ、次。
次。
次。
次。
『おこげ!!!!!!!!』
少年が、一冊の本を手にした途端、本は金色に輝き始めた。
風もないのにページが次々とめくり上がり、空中に浮き、ゆっくりと回転する。
『おにいちゃん! みて! おこげ、おこげだよ!!! おこげ、ぼく、さがしてるの!!!』
少年が指差したページには、柴犬をベースにした、雑種の犬の写真があった。
頭の一部だけ焦がしたように茶色い毛が生えていた。
そして犬にしては悲しそうな表情をしていた。
「あ……」
鳩麦さんと、私は犬の説明文に、言葉を失った。
『ーーおこげと名付けられた雑種犬。両親と飼育の約束を取り付けた日に近隣住民に拾得物として警察に届け出有。その後、保健所にて殺処分』
おこげは、もう、居ないようだった。
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