「じ」

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「あら・・・・た?」 動かないエレベータの 中に新と2人きり。 え、 何、 新どうしたの、 なに、してんの? わたしが小さな声で 新の名前を呼ぶと、 新はじっとわたしの 顔を見つめて、 それから目線を 下に落とした。 え、 ホント何、 なに、・・・・・・・ 今までとは明らかに 空気が違って、 わたしの心臓はうるさく 脈打ち始める。 ゴクリと生唾を飲むと、 新がフッと顔をあげた。 「ね、やっぱさっきの 言わなかったこと言うわ。 ・・・・あのさ、 ともえって、 好きな奴、いる?」 こう言った新の表情は、 いつものふざけた 感じじゃなくて、 真剣、な感じ。 大きな瞳でまっすぐ こっちを見て、 少しだけ、 眉をひそめてる。 「・・・すき、 な奴って、 あの、 好きな人、 のこと?」 それしかないのに、 それ以外ありえないのに、 わたしは、 今のこの現状が 信じられなくて、 物凄くしょうもない 質問をした。 新は、 わたしに好きな人が いるかどうか、 知りたいの・・・・?
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