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「そう、好きな奴。」
新はさらりと肯定すると、
ゆっくりと舌で自分の
唇を舐めた。
舌が、艶めかしく光る。
「す、好きな奴なんて
いっ、いないよ!!」
思わず全力で否定して、
新から目を背けた。
こいつ何考えてんのよ、
そんなこと聞いて
どうすんのよ、
なんでエレベーターに
閉じ込めたりすんのよ、
何が、
したいのよ。
新はしばらくたれ目を
細めてじーーっとこっちを
見下ろしてきたけど、
すっと腰をかがめて、
わたしの顔を至近距離で
覗き込んできた。
そして、形の良い唇を
薄く開いて、
「・・・ほんと?」
―――囁いてきたんだ。
ほんと、
・・・・・じゃない。
わたしは新が好き。
・・・・・・だけど、
わたしにはまだ新に
気持ちを告げる勇気
なんて全然なくて。
今の関係が壊れる
可能性のある発言を
する勇気が、なくて。
素直になる勇気がなくて。
「ほ、
ほんとだよっ・・・!」
いつもみたいに、
強がった発言をした。
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