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「さぁ、今年もよろしく頼むよ!」
部長は俺の肩をバシッと叩く。
その力が思いの外強すぎて、俺は少しだけ
よろけた。
「おいおい。大丈夫か?」
「はい。」
今の衝撃でずれた真っ赤な帽子を直しながら
愛想笑いを浮かべれば、部長は軽くため息をつく。
「頼むぞ。君のことを日本中の子供達が楽しみに
待っているんだからな。」
「はい。」
そう言って、外に出ようとした俺の耳に
誰かの急くような足音が聞こえてきた。
振り返ると…
「聖也くんっ!」
同期の真理亜ちゃんが慌てた様子でこちらへ
駆けてくる。
小柄な彼女がぴょこぴょこと駆ける姿は
俺の気持ちをほわっと温かくしてくれた。
俺の目の前まで来て、胸に手を当て呼吸を
ひとつ整えると…
「行ってらっしゃい!サンタさん!」
弾けるような笑顔を向けてくれる。
その笑顔につられて俺も笑顔で返す。
「行ってきます。」
そんな俺達のやりとりを見ながら部長は、ニマニマとほくそ笑んでいた。
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