寝顔と電車と隣の君と

2/3
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 驚いて彼の方を見ると、彼が私の肩にもたれかかって眠っていた。  ……ち、近い。  いつも遠目で見ているだけだった彼。近くで見ても綺麗な顔をしている。  日焼けを知らない真っ白な肌。日焼け止めだスキンケアだと忙しい女子よりもずっと白くて綺麗。  今は閉じている綺麗な二重の瞳。友達や恋人には、その瞳で優しい眼差しを向けるのだろうか……?  目の下にある小さな涙ボクロ。これは初めて気がついた。この綺麗な顔のこの位置にホクロがあるなんて、なんだかずるい。  他にも、顔に影を落とす長いまつ毛。すっと通った鼻筋。潤った唇。軽く開いたそこから覗く白い歯。柔らかそうな黒髪……。  彼の全てが、まるで美しい人形のようだった。  ……神様、お願い。  ……時間を止めて。  少なくともそんなことを願ってしまうほどに、私は彼の顔に見惚れてしまっていた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!