1章 その1

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 ずいぶん待って、ハニーワンはようやくやってきた。私は抱き上げて膝の上に乗せた。 「遅かったわねー。あんた、段々足が遅くなってきてるんじゃない?」  ハニーワンは犬型埴輪、だけどワンと吠えたりクーンと鳴くことは出来ず、体を動かすことで愛情を表現する。目をつぶったり首を振ったりして、私のお腹やおっぱいに顔を押し付けてくる。  もともと足が短いから、走るのは遅いのだが、よたよた具合が老化を思わせた。しかし顔なんかを見てもそんなふうには見えなかった。  老化してるのは私かも、と思う。こうやってハニーワンを撫でていたら、今日はもう何もしたくなくなった。  現実世界で久しぶりにエッチしたから疲れている。現実世界で抱かれた記憶は私にも伝わっていた。 「課長、今日はもう疲れちゃった。悪いけど、もう帰ってくれない?ここにいてもいいけど」  丸岡課長は私を見て、微笑みながら首を横に振った。 「綾香がいないのに、ここにいたって仕方がないじゃないか。月夜の綺麗な晩です、散歩しながら歩いて帰りますよ」  我が愛する丸岡課長は私が聞きたいセリフを言って、微笑みを浮かべて帰っていった。これはこれで少々物足りない気分だけど、これ以上の好き勝手はできない。  私はハニーワンを抱いたまま、屋敷に入った。  脚付きバスにお湯を落とすとハニーワンはあわてて私の腕を振り払ってどこかにいってしまった。ハニーワンはお風呂が嫌いなのだ。  バスに湯を張り終わると、私はぴっちりジーンズをお尻を振って、剥がすように脱いだ。それからゆっくりとバスタブに身体を沈める。湯船から脚を出して、ツルツルお肌をさすりながらマッサージ。でも長湯は苦手だ、ほんの三分ほどでバスから出た。  タオルで身体の水気を拭き取ると、裸のままリビングルームのソファーに寝転んだ。 「ふん、ハメ鉄ね。よく言うよ」  私は花田鎮夫の貧相な身体を思い出しながら、そのまま目を閉じる。今日はベッドじゃなくてここにいよう。  そろそろ「夢のかけら」の中で仕事を始める時間だ。  私は眠るのではない。私はここで横になって、今日一日、現実世界で私が見聞きしたことの復習をするのだ。  こうやってじっとしていると、まぶたに映像がダイジェストになって流れてくるのだ。
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