命拾い

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 平日で、いつもの朝だった。駅から駅へ。いくつもの路線が重なる場所は通勤で行き交う人々で今日も溢れている。  その中を、ぼんやりした頭で僕は歩いていた。夜ふかしをしたせいだろう。まるで地に足がついていない心地である。  これはダメだ。そう感じながら、近くのコンビニでコーヒーでも買おうとしたときだった。  いきなり肩を叩かれた。  振り向くと、フードを被った青年が口もとに笑みを浮かべて立っている。 「これ、落としましたよ」  青年がおっとりとした口調で言うと、火の玉のようなものを差しだした。  それは青年の出した手のひらの上で、ゆらゆらと行き場所を失ったかようにあっちに行こうかこっちに行こうかと迷っているようであった。 「こんなもの落とした覚えないですけど」  揺れる火の玉のようなものをじっと見つめながら、僕は首をかしげる。身に覚えのない落としものを渡されるほど、妙な気分になるものはない。  道の真ん中で突っ立っている僕らを迷惑そうに見ながら、人々が通りすぎていく。
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