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「おや、そうですか? でも、これは絶対にあなたのものなんですけどねえ」
僕の声に困惑の色を感じたはずだろうに、青年はねちっこい言いまわしをしてくる。
いささか面倒な相手だ、と僕は思った。僕は今、職場へ向かう最中なのだ。こんな変なヤツと話しこんでいる暇はない。
「まあ、そこまで言うのなら」
別にもらったところで損はないだろう。そんな軽い気持ちで、僕は青年から火の玉のようなものを受けとった。
すると、青年はふっと笑みを漏らし、僕に耳打ちした。
「命拾いしましたね」
僕が目を丸くするのにおかまいなく、青年は人波へと消えていった。どこからかとりだした、巨大な鎌を持ちながら。
あれが死神というヤツだったのかは、もはや知る術がなかった。
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