あとがき

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あとがき

ひっそりと書き進めた物語が、終わりを迎えました。本編は昨年11月に書き終えて公開予約を済ませていたので、久しぶりに編集画面を開いています。 背の高い、長髪のクラウンを題材にした物語が私の中に現れたのは、私が高校生の頃のことです。思えば長い時間、彼らのことを待たせてしまいました。当時、別の小説サイトにて全く別の現代劇を書いていました。学校から帰り、宿題や予習を終えてから布団に潜り込んで携帯(ガラケーです。スマホの出始めの頃で、学生には縁がありませんでした)をぽちぽちと叩いていた時間がとても楽しかったのを覚えています。 その後受験に追われ、物語の世界とは距離を置きました。その間ネット小説を読むこともしていなかったので、浦島太郎のような気持ちです。色々と便利になり、複雑になったなぁとしみじみ思います。 大人になって、会社勤めの傍ら、なかなか物語に向き合えない日々が続きました。気づけば物語の世界を離れてから、10年近く経っていました。そうして無性に、もう一度書きたいと思いました。真っ先に浮かんだのが、イリのことでした。メモも残っていない当時の記憶が鮮明に蘇り、私の中で金色の髪を持つクラウンがそっと囁きました。「私は物語の伴走者です」と。彼が恋をした少女を主人公に物語を書き進めることは、ときに辛く苦しいこともありましたが(ミッドベリー編は特に)、これでよかったのだと書き終えた今思っています。 書き始めてからはまるで熱に侵されたように没頭しました。プロットを組んで大筋を書き上げるまで2週間ほどかかり、その後何度も読み返して細かな修正を繰り返しました。初めて文章を「公開」設定に切り替えるときは少し手が震えたのを覚えています。ひりつくような、心地の良い緊張でした。 エブリスタ編集部さまには「新作セレクション」に選んでいただき、素敵なクリスマスプレゼントをいただきました。とても幸運な機会を頂戴し光栄でした。ありがとうございました。 思っていたよりたくさんの方に読んでいただけたので、僭越ながらお礼をと思っています。スター特典にて、番外編や設定資料等を公開する予定です。よければ覗いてみてください。 拙い部分も多くあったことと思いますが、お読みくださった皆様、本当にありがとうございました。また、別の物語でお会いできたらうれしいです。 2021年1月11日 卯の花
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