3番窓口

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この部署に勤務する社員は、”聞ける耳“ を持つ。故に、聞こえるのである。 今日、落し物として届けられた捨てられた物は、嘆きが凄かった。タラタラと、いや、ネチネチと、何と表現すればいいだろうか。 とにかく、怒っているのだ。悲しみを通り越して怒りが怨念に変わっては大変な事になる。 本来なら、落し物を預かり、問い合わせに対応し、ある期間を過ぎても持ち主が現れなければ別の場所に保管するのが通常の窓口業務なのだが、ここは3番窓口。意思を持った落し物なのだから、“聞ける耳”を持つ社員の仕事は通常業務とは異なるのである。 落し物だが捨てられた物。何の因果かここに来たという事は、持ち主の元に戻るという事で、結果、捨てられる事に変わりはないのだが、正しく捨てるまでに、ひと悶着あるのだ。
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