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それは教室前の花壇で水やりを終えて手を洗ったあとのこと、よく水を切った手を入れたポケットに、あるはずのハンカチがなかった。
「さっきまではあったのに……。」
じょうろに水を汲む際に、濡れた手を拭いたのだからその時まではあったのだと確信する美樹は、きっとこのあたりに落ちているハズだと思い、花壇の周りを探す。
そのハンカチは祖母の形見のモノ。おばあちゃん子だった美樹にとって、かけがえのないハンカチであった。大切なものだからこそ、タンスの奥にしまうんじゃなくて、日々大事に使う。祖母からの教えもあり、そう努めてきた美樹であったが、この日ばかりはしまっておけばよかったと後悔した。
昼休みが終われば午後のテストが始まる。少しでも試験範囲を見直す時間がほしいし、ましてやその時間に遅れるわけにもいかない。焦る美樹を尻目に時間ばかりが過ぎていく。どうしようという気持ちだけがのしかかり、美樹の視界を歪ませる。
とその時、せり上がった花壇のブロックに転がってきたサッカーボールがぶつかった。
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